小児や難病の利用者を初めて担当することになったとき、何を確認すればいいかご存知ですか?
小児や難病の利用者への訪問看護は、成人の一般的なケースとは異なる視点でのアセスメントや、家族全体への支援が重要になります。
この記事では、初めて担当する際に押さえておきたいアセスメントの視点と、家族支援のポイントを整理します。
※保険適用・算定要件そのものは、関連記事(小児の訪問看護の保険適用、別表第7・8に該当する場合)で扱っています。この記事は実務面を中心に扱います。

小児・難病の訪問看護で意識したいこと
小児や難病の利用者への訪問看護は、成人の一般的な疾患のケースと比べて、次のような点で特有の配慮が必要になります。
- 成長・発達の途上にあるため、状態や必要なケアが年齢・発達段階によって変化し続ける(小児の場合)
- 疾患によって病状の経過や症状の変化は異なるため、個々の状態に応じた継続的な評価が必要(難病の場合)
- 家族(特に主たる介護者、きょうだい)の状況が、療養生活の継続に大きく影響するため、家族への支援も重要になる
- 学校・保育所、行政、医療機関など、関わる機関が多岐にわたる
小児の場合は、「医療的ケア児」という言葉が使われます。「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(令和3年法律第81号)は、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為(医療的ケア)を、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に受けることが不可欠である児童(18歳未満の者、及び18歳以上で高等学校等に在籍する者)を、医療的ケア児としています(第2条)。同法は、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資することを、目的の一つとしています(第1条)。ただし、訪問看護の保険の扱いは、この定義に当たるかどうかだけでは決まりません。
この法律は、令和8年法律第77号による改正で、令和9年4月1日(2027年4月1日)に施行される内容が、公布されています。施行後は、法律の題名が「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」となり、支援の対象に、医療的ケア児等と重症心身障害者が加わります。この記事の法律に関する記載は、施行前(現行)の内容です。
難病の場合は、疾患ごとに、病態、経過、必要なケアが大きく異なります。難病の医療費助成の対象かどうかと、訪問看護の保険の扱いも、別の問題です。
保険適用(医療保険・介護保険のどちらが対象か、別表第7・8との関係)については、関連記事の小児(18歳未満)の訪問看護の保険適用、厚生労働大臣が定める疾病等(別表7・8)に該当する場合で扱っているので、そちらをご覧ください。
アセスメントの視点
ここから先は、告示・通知に明記された算定要件ではなく、実務上一般的に行われるアセスメントの視点の整理です。個別の疾患・病状・年齢に応じて、主治医の指示と訪問看護計画に沿って確認してください。呼吸数や酸素飽和度などの、異常の目安は、利用者ごとに異なるため、この記事では示しません。

小児の場合
| 視点 | 訪問時に確認すること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 年齢・発達段階に応じた状態 | 年齢相応の発達か、疾患・障害による影響はあるか。前回から、できることが増えたか、減ったか | 観察した事実と、前回からの変化 |
| 呼吸・栄養・水分・排泄・睡眠 | 呼吸の様子、栄養・水分の摂取方法と量、排泄の状況、睡眠の状況。数値の目安は、主治医の指示に従う | 観察した事実(実測値を含む)と、普段との違い |
| 医療的ケアの実施状況(気管切開、人工呼吸器、経管栄養など) | 誰がどのケアを実施しているか、手技、物品・機器の状態(アラーム、電源、予備)、停電や災害時の備え | 実施したケアと反応、家族が実施しているケアの状況 |
| 成長に伴う変化 | 体格の変化、機器・物品の合い具合、必要なケアの変化。見直しが必要な場合は、主治医に相談する | 変化の内容と、相談した内容 |
| 本人の意思表示・苦痛のサイン | 表情、体の動き、声、呼吸や脈拍の変化など。本人なりのサインを、家族が把握していることがあるため、聞き取る | 確認できたサインと、家族からの聞き取り |
| 通園・通学と情報共有 | 通園・通学の状況、学校等での医療的ケアの実施体制、共有している情報の内容 | 共有した内容、共有した相手、家族の同意の有無 |
学校や保育所での医療的ケアの実施体制は、自治体や学校ごとに異なる場合があります。個別の状況は、家族や学校等に確認してください。
難病の場合
| 視点 | 訪問時に確認すること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 病状の経過と、前回からの変化 | 動作、症状、日常生活の状況が、前回と比べて、どう変わったか | 観察した事実と、前回からの変化 |
| 症状の日内変動と、増悪の兆候 | 時間帯による変動、症状が強くなるきっかけ、増悪の兆候の有無 | 変動の様子、家族や本人からの聞き取り |
| 呼吸・嚥下・栄養・移動・ADLの変化(疾患や状態に応じて) | 疾患や状態に応じて、必要な項目を選んで確認する | 変化があった項目と、その内容 |
| 医療機器や処置の必要性の変化 | 現在使っている機器・処置、今後追加・変更が見込まれるもの | 変化の内容と、相談した内容 |
| 本人の意思と、今後の療養に関する意向 | 本人の意向、家族の意向。病状の変化に応じて必要になる医療的な選択(例:人工呼吸器の装着の可否など。疾患により異なる)について、継続的に確認する | 意向を確認したやり取り、意向の変化 |
| 主治医などへの報告・相談が必要な変化 | 前回からの変化、急な変化。報告の目安は、主治医の指示や事業所の手順に従う | 報告・相談した内容と、受けた指示 |
難病は、疾患ごとに、病態、経過、必要な観察が異なります。上の項目が、すべての疾患に共通するとは限りません。個別の疾患・病状に応じて、主治医や、疾患に関する診療の資料などで確認してください。
家族支援のポイント
- 主たる介護者の負担の把握:介護にかかる時間、睡眠や休息の状況、身体的・精神的な負担の程度。夜間の対応(吸引、注入、機器のアラームなど)の有無も確認する
- 家族間の役割分担と、支援者の有無:介護が特定の家族に集中していないか。介護者以外に、担い手や相談できる人がいるか
- きょうだい児への配慮:小児の場合、きょうだいへの影響(親の関わりの偏り、孤立感など)にも目を向ける。きょうだいの様子は、訪問時に、家族に確認する
- レスパイト、短期入所、相談支援などの社会資源:家族が休息を取れるサービスの情報を提供する。対象年齢、疾患、医療的ケアの内容、利用できる回数や時間などの条件は、サービスや市区町村によって異なります。誰でも利用できるとは限らないため、勧める前に、市区町村や相談支援専門員に、条件と手続きを確認してください
- 公的な相談窓口:小児では、医療的ケア児支援センターが、医療的ケア児とその家族その他の関係者からの相談に応じ、情報の提供や助言その他の支援を行います(第14条)。センターは、都道府県知事が指定した法人、または都道府県が自ら行います。難病では、難病法第28条に基づく療養生活環境整備事業として、難病の患者やその家族等に対する相談支援が実施されています。相談窓口の名称(難病相談支援センターなど)、運営主体、対応内容は、地域によって異なるため、お住まいの地域の窓口に確認してください
- 医療・福祉・保健・教育機関との連携:主治医、学校や保育所、保健所・保健センター、相談支援事業所などと、本人・家族の同意の範囲で、情報を共有する体制をつくる
これらは一般的な実務知識であり、告示・通知に定められた算定要件そのものではありません。事業所ごとの手順書・マニュアルと合わせてご確認ください。
記録に残しておきたいこと
訪問看護計画書・報告書の作成、記録の整備などは、省令・通知に定めがあります。ここで示すのは、アセスメントと家族支援を、次の訪問につなげるための、実務上の記録の流れで、それらに置き換わるものではありません。
| 区分 | 書き方のポイント | 架空の記録例(一般例) |
|---|---|---|
| 実測値 | 測定した値と、測定時の状況を記載する(数値は、実測値のみ) | 呼吸数○回/分、SpO2 ○%(測定時の状況:安静時など) |
| 観察した事実 | 見たこと・聞いたことを、評価を入れずに記載する | 吸引物の色・量・性状(具体的に記載)。呼吸の様子(観察した内容を記載) |
| 普段との比較 | 比較の根拠(前回の記録、家族の話)を明記する | 前回訪問時(○月○日)の記録では○○。母の話では、日中の吸引が増えたとのこと |
| アセスメント(看護師の判断) | 事実と分けて、判断・推測であることが分かるように記載する | (判断)○○の可能性を考えた。根拠:上記の観察した事実 |
| 実施したケアと、その反応 | 実施した内容と、実施後に観察した事実を、分けて記載する | 吸引、体位調整を実施。実施後の呼吸の様子:(観察した内容を記載) |
| 本人・家族の意向や負担 | 発言は、できるだけそのまま記載する | 母より「夜に眠れていない」との発言 |
| 報告・相談・連携 | 日時、相手、伝えた内容、受けた指示を記載する | ○時○分、主治医に電話で報告。伝えた内容:(記載)。受けた指示:(指示の内容をそのまま記載) |
| 次回訪問で確認する事項 | 次回、確認する点を記載する | 吸引の回数の推移、母の睡眠の状況、指示に沿った対応の実施状況 |
上の記録例は、架空の一般例です。数値や判断は、実際の状況に合わせて記載してください。疾患や状態によって、記録すべき内容は異なります。特定の疾患の臨床判断を示すものではありません。報告の要否やタイミングは、主治医の指示と、事業所の手順に従ってください。
よくある質問
Q. 小児・難病の利用者は、医療保険と介護保険のどちらが対象になりますか?
A. 年齢や要介護認定の有無、疾患の種類によって異なります。詳しくは関連記事の小児(18歳未満)の訪問看護の保険適用、厚生労働大臣が定める疾病等(別表7・8)に該当する場合をご覧ください。
Q. 家族支援は、訪問看護の算定要件に含まれますか?
A. 家族(介護者)への指導・支援は訪問看護の実務として広く行われていますが、この記事で挙げた家族支援のポイントは一般的な実務知識であり、個別の算定要件そのものではありません。
Q. 主治医に報告するかどうかの判断基準は、ありますか?
A. 報告の目安(数値や症状など)は、利用者ごとに、主治医の指示や事業所の手順で定めるものです。この記事では、基準を示していません。迷う場合は、主治医に確認してください。
関連記事
出典
この記事のアセスメントの視点、家族支援のポイント、記録の流れは、告示・通知に基づくものではなく、一般的な実務知識の整理です。次の資料は、記載のある部分の根拠です。
- 医療的ケア児の定義(第2条)、法律の目的(第1条)、医療的ケア児支援センター(第14条)(「意識したいこと」「家族支援」):医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)(こども家庭庁掲載の原文)
- 法改正の内容(施行日、題名、支援対象の拡大)(「意識したいこと」):医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第77号、令和8年7月31日公布、令和9年4月1日施行)の概要(こども家庭庁)
- 地域の医療的ケア児支援センターへの相談(「家族支援」):こども家庭庁「医療的ケア児等とその家族に対する支援施策」
- 難病法第28条に基づく療養生活環境整備事業による相談支援(「家族支援」):療養生活環境整備事業実施要綱(平成27年3月30日健発0330第14号、令和5年9月29日健生発0929第9号による最終一部改正)第1 目的。難病情報センター掲載の資料(難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)第28条に基づき、難病の患者及びその家族等に対する相談支援などを行うことを目的としている)
- 訪問看護計画書・報告書の作成などの、記録に関する定め(「記録に残しておきたいこと」):指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号) 第17条
最終確認日:2026年10月29日