訪問看護物価対応料とベースアップ評価料の算定実務|2026年改定のポイント(医療保険)

訪問看護物価対応料とベースアップ評価料、どうやって算定するの?
2026年6月の改定で、物価上昇と賃上げに対応する評価として、「訪問看護物価対応料」が新設され、「訪問看護ベースアップ評価料」が見直されました。どちらも、令和8年度と令和9年度で、段階的に評価が変わります。
この記事では、2つの評価の、金額、算定の対象、要件を整理します。
※この記事は医療保険の訪問看護が対象です。

改定の背景

令和8年度の診療報酬改定では、医療現場での生産性向上の取組と併せて、令和8年度・9年度に、それぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップを実現するための措置がとられました(診療報酬全体の措置です)。物価の上昇への対応としては、令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応するために、「物価対応料」が新設されています。

訪問看護物価対応料(新設)

訪問看護管理療養費や包括型訪問看護療養費の算定に併せて算定できる評価です。

区分令和8年度令和9年6月以降
訪問看護物価対応料1 イ 月の初日の訪問の場合60円120円
訪問看護物価対応料1 ロ 月の2日目以降の訪問の場合20円40円
訪問看護物価対応料220円40円

いずれも、1日につき1回に限り算定します。

算定の要件

  • 物価対応料1:ステーションが、訪問看護管理療養費を算定した場合に限り、その利用者1人につき、区分に従って算定します。
  • 物価対応料2:ステーションが、包括型訪問看護療養費を算定した場合に限り、その利用者1人につき算定します。
  • 令和9年6月以降は、所定額の2倍(100分の200)を算定します。

包括型については、包括型訪問看護療養費の記事で解説しています。

訪問看護ベースアップ評価料(見直し)

訪問看護ステーションに勤務する、幅広い職員の人材確保と、確実な賃上げを実施するための評価です。今回の改定で、対象職員が拡大されました(これまでは「主として医療に従事する職員」でしたが、改定後は「当該訪問看護ステーションに勤務する職員」です)。

対象職員は、そのステーションに勤務する職員のうち、開設者、役員、専ら管理者の業務に従事する者、業務委託により勤務する者を、除いた職員です。派遣職員は、派遣元と相談して、対象職員と同程度以上の賃金改善を行うなど、一定の要件を満たす場合に限り、対象にできます(業務委託(請負)の職員は対象外です)。

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)

ステーションが、訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)または包括型訪問看護療養費を算定している利用者1人につき、月1回に限り算定します。

改定前令和8年6月〜令和9年5月令和9年6月〜
新たに賃上げを行うステーション780円1,050円2,100円
継続的に賃上げを実施しているステーション780円1,830円2,880円
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)を算定している利用者1人につき、区分に従って、月1回に限り算定します。区分は、令和8年6月から18区分で、令和9年6月以降は36区分に拡大されます。

区分改定前令和8年6月〜(新たに賃上げ)令和8年6月〜(継続的賃上げ)
(Ⅱ)110円30円40円
(Ⅱ)220円60円80円
(Ⅱ)10100円300円400円
(Ⅱ)11150円330円480円
(Ⅱ)18500円540円1,040円

※上の表は、18区分のうち代表的な5区分のみを掲載しています。(Ⅱ)3〜9・12〜17の金額は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」でご確認ください。

令和9年6月以降は、(Ⅱ)19〜36の区分が加わります(新たに賃上げを行う場合は、(Ⅱ)19が570円、(Ⅱ)36が1,080円)。継続的に賃上げを実施しているステーションの、令和9年6月以降の金額は、(Ⅱ)1が40円、(Ⅱ)18が630円、(Ⅱ)36が1,580円です。全36区分の金額も、同資料でご確認ください。

「継続的に賃上げを実施している」ステーション

継続的に賃上げを実施しているステーションは、届出をしたうえで、上の表の高い金額(Ⅰ:1,830円・2,880円、Ⅱ:継続的賃上げの金額)を算定できます。次のいずれかに該当することが、施設基準です。

  • 令和8年3月31日時点で、その評価料(Ⅰまたは(Ⅱ))を届け出ていたステーション
  • 上に該当しないが、対象職員の、その評価料を算定する月時点の基本給等の合計を、令和6年3月時点の給与体系に当てはめた場合と比較して、次の水準以上のベア等を行ったステーション
対象職員看護補助者・事務職員
令和8年度5.5%以上8%以上
令和9年度8.7%以上13.7%以上

令和8年3月31日時点で、その評価料を算定している必要があります。令和8年4月以降に算定を始めたステーションは、ここには含まれません(疑義解釈)。

施設基準(概要)

(Ⅰ)の要件
  • 対象職員が、いること
  • 得られる収入は、対象職員の基本給等の引上げ(ベア等)と、それに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いること
  • 労働基準法等を遵守すること
  • 賃金改善を実施する方法等を、届出に合わせて、対象職員に周知すること。対象職員から照会があった場合は、書面を用いて説明するなど、分かりやすく回答すること
  • 過年度に算定している場合は、前年度と当年度に提出が必要な賃金改善実績報告書を、適切に提出していること
(Ⅱ)の要件
  • (Ⅰ)の届出を行っていること
  • (Ⅰ)により算定される金額の見込みが、賃金改善算定基礎額×医療保険の利用者割合の5割未満であること
  • 常勤換算2人以上の対象職員が勤務していること(基本診療料の施設基準等の別表第6の2に掲げる地域に所在するステーションは、この限りではありません)
  • 社会保険診療等の収入金額の合計が、総収入の100分の80を超えること
  • 労働基準法等の遵守、賃金改善の方法等の周知、過年度に算定している場合は当年度分の賃金改善実績報告書の提出

賃金改善算定基礎額は、対象職員の月額賃金総額に、次の数を乗じた額の合計です。

職種令和8年6月〜令和9年5月令和9年6月〜
対象職員(看護補助者・事務職員を除く)1.29×3.2%1.29×6.4%
看護補助者・事務職員1.29×5.7%1.29×11.4%

月額賃金総額は、基本給等と、時間外手当等の月ごとに変動して支払われる手当の合計です(賞与などを除きます)。原則として、届出を行う月の直近1か月の総額を用います。

医療保険の利用者割合は、直近3か月の1月あたりの、医療保険の給付対象の訪問看護を受けた者を、医療保険と介護保険の給付対象の訪問看護を受けた者の合計で割って算出します。同一月に、医療保険と介護保険の両方の訪問看護を受けた者は、医療保険の利用者として扱います。

(Ⅱ)の区分の決め方

届出時に、次の【A】を計算して、別表に従い、該当する区分のいずれかを届け出ます。

【A】=(賃金改善算定基礎額×医療保険の利用者割合×0.5 − (Ⅰ)により算定される金額の見込み)÷(Ⅱ)の算定回数の見込み

(Ⅰ)の算定金額の見込みと、(Ⅱ)の算定回数の見込みは、管理療養費(月の初日の訪問の場合)または包括型を算定する実利用者の人数を用いて、届出を行う月の直近3か月の、1月あたりの平均で計算します。

【A】が0を超えると(Ⅱ)1(30円)、45以上で(Ⅱ)2(60円)です。そこから、30ごとに1区分ずつ上がり、525以上で(Ⅱ)18(540円)、令和9年6月からは、1,065以上で(Ⅱ)36(1,080円)です。

賃金改善に使える範囲

  • ベースアップ評価料により得られる収入は、対象職員の「基本給等の引上げ(ベア等)」と、「ベア等に伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分を含む)等の増加分」に用います。
  • 恒常的に夜間を含む交替制勤務をとっている職場の職員に支払われる夜勤手当は、決まって毎月支払われる手当に準じて、基本給等に含めて構いません。
  • ベア等を行ったステーションで、利用者数等の変動により、収入が、増加分に用いた額を上回り、追加でベア等を行うことが困難な場合に限り、賞与等の手当など、ベア等以外の方法による賃金改善が認められます。
  • 賃金改善の対象とする項目を、特定して行います。改善する項目以外の賃金項目(業績等に応じて変動するものを除く)の水準を、低下させてはいけません。
  • 6月から翌年5月の1年間に算定した収入を、その年の4月から翌年3月の賃金改善に充当することは、差し支えありません。
  • 「令和7年度医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」の補助金による部分は、賃金改善の実績に含めません。
  • 法定福利費は、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金、雇用保険料、労災保険料等について、賃金改善に応じた事業者負担の増加分です。実績報告書では、合理的な方法による概算(最大16.5%)でも構いません。任意加入の制度(退職手当共済等)と、企業型確定拠出年金の掛金は、含みません。

手続き

  • 届出:別紙様式11を使い、ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局長に、提出します。受理された月の翌月から算定できます(月の最初の開庁日に受理された場合は、その月の1日から)。届出には、対象職員への給与の支払い実績が必要で、(Ⅰ)は届出前の1月分、(Ⅱ)は届出前の3月分です。
  • (Ⅱ)の届出の時期:令和8年度と令和9年度は、点数構造の変更に伴い、評価区分を見直す必要があるため、新規届出時と、毎年6月1日時点で、その評価料を算定できるよう、届け出ます。
  • 報告:毎年8月に、前年度の賃金改善の取組状況を「賃金改善実績報告書」で、算定している年度の取組状況を「賃金改善中間報告書」で、地方厚生(支)局長に報告します(別紙様式11 別添4の1)。令和8年度の中間報告書は、令和8年6月・7月分の賃上げ実績を報告します。
  • 特別事情届出書:事業の継続を図るために、対象職員の賃金水準(ベースアップ評価料による賃金改善分を除く)を引き下げたうえで、賃金改善を行う場合は、収支状況、引下げの内容等を記載した「特別事情届出書」を、別紙様式11 別添3で届け出ます。年度を超えて引き下げる場合は、次年度の中間報告書の提出時に、再度届け出ます。
  • 書類の保管:報告書等の根拠となる資料は、算定する年度の終了後、3年間保管します。
  • 法人内で複数のステーションをまとめる場合:同一の給与体系に基づく複数のステーションで、月額賃金総額と対象職員数を通算して届け出る場合は、別紙様式11 別添2を、報告書をまとめて作成する場合は、別添4の2を使います。
  • 区分の変更:対象職員の数、または、3月ごとの(Ⅰ)の算定回数に、届出時と比較して1割以上の変動があり、区分を再計算して区分が変わる場合は、その月内に届出を行い、翌月から変更後の区分で算定します。
  • 施設基準を満たさなくなった場合(対象職員が0人になったなど):速やかに届出を変更し、変更の届出を行った日の属する月の翌月から、算定しません。

算定できない場合

訪問看護遠隔診療補助料を算定する日は、同一日に、訪問看護ベースアップ評価料と訪問看護物価対応料を、算定できません。

管理者が確認しておきたいこと

  1. 対象の利用者:訪問看護管理療養費(月の初日)または包括型を算定している利用者について、物価対応料とベースアップ評価料(Ⅰ)を、算定できているか
  2. 金額の切り替え:令和9年6月に、物価対応料が2倍になり、ベースアップ評価料の金額と区分も変わることを、把握しているか
  3. 届出:算定を始める月、区分変更、毎年6月1日時点の(Ⅱ)の届出を、行っているか。給与の支払い実績((Ⅰ)は1月分、(Ⅱ)は3月分)があるか
  4. 報告:毎年8月の、賃金改善実績報告書と中間報告書の、提出時期を把握しているか。根拠資料を3年間保管しているか
  5. 使い道:得られた収入を、賃金改善に使える範囲(基本給等の引上げと、それに伴う増加分)で、使っているか。改善する項目以外の賃金の水準を、下げていないか
  6. 継続的賃上げ:令和8年3月31日時点の届出があるか、ない場合は、令和6年3月比の水準(令和8年度5.5%・8%、令和9年度8.7%・13.7%)を満たしているか

よくある質問

Q. 物価対応料は、いつから算定できますか?
A. 令和8年度(2026年6月施行)の改定で新設されました。

Q. 物価対応料は、管理療養費を算定しない日にも、算定できますか?
A. できません。物価対応料1は、管理療養費を算定した場合に限り、物価対応料2は、包括型を算定した場合に限り、それぞれ1日につき1回算定します。

Q. ベースアップ評価料の(Ⅰ)と(Ⅱ)は、どちらか一方ですか?
A. (Ⅱ)は、(Ⅰ)を算定している利用者1人につき算定します。(Ⅰ)を算定していない利用者には、(Ⅱ)を算定できません。

Q. 令和8年4月に、ベースアップ評価料の算定を始めたステーションは、「継続的に賃上げを実施している」に当たりますか?
A. 令和8年3月31日時点で算定している必要があるため、令和8年4月以降に算定を始めたステーションは、その条件には含まれません。令和6年3月比5.5%(看護補助者・事務職員は8%)以上のベア等を行っていれば、もう1つの条件で該当します。

Q. 令和9年6月以降は、どう変わりますか?
A. 物価対応料は、所定額の2倍になります。ベースアップ評価料(Ⅰ)は、2,100円(新たに賃上げ)または2,880円(継続的に賃上げ)になり、(Ⅱ)は36区分に拡大されます。賃金改善算定基礎額の計算に使う数と、継続的賃上げの水準も、変わります。

まとめ

  • 訪問看護物価対応料は、管理療養費・包括型を算定した場合に、1日につき1回算定する新設の評価で、令和8年度は月の初日60円、月の2日目以降20円(包括型は20円)。令和9年6月以降は2倍
  • ベースアップ評価料は、対象職員が拡大され、令和8年度・9年度で段階的な評価に。継続的に賃上げを行うステーションは、高い金額を算定できる
  • (Ⅰ)は、管理療養費(月の初日)または包括型を算定する利用者1人につき月1回。(Ⅱ)は、(Ⅰ)を算定する利用者1人につき月1回で、区分は【A】で決まり、18から36に拡大
  • 届出は受理の翌月から算定でき、(Ⅱ)は新規届出時と毎年6月1日時点で届け出る。毎年8月に、実績報告書と中間報告書を提出する

最新の金額や算定ルールは、必ず厚生労働省の資料や通知で確認してください。

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出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年9月4日版)/訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(令和8年厚生労働省告示第74号)/訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(令和8年厚生労働省告示第75号)/算定留意事項通知(令和8年3月5日 保発0305第19号)/届出手続きの通知(令和8年3月5日 保医発0305第9号)/疑義解釈資料(その1・2・3・11)/中央社会保険医療協議会 総会(第647回)資料 総-1「個別改定項目について」(令和8年2月13日)
最終確認日:2026年10月15日 ※制度は改定されるため、最新情報をご確認ください。

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