訪問看護にも処遇改善加算ができたと聞いたけれど、うちのステーションは、どう算定するの?
2026年6月から、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護が、新たに対象になりました。加算率や要件が、従来の対象サービスと違うため、確認しておきたい点が多い加算です。
この記事では、加算率、算定要件、賃金改善のルール、届出と報告の流れを整理します。
※この記事は介護保険の訪問看護(介護予防訪問看護を含む)が対象です。医療保険の訪問看護の賃上げに関する評価は、物価対応料・ベースアップ評価料の記事で解説しています。

何が新しくなったの?
令和8年度の介護報酬改定は、令和9年度の改定を待たずに行う、期中改定として実施されました。介護分野の職員の、他職種と遜色のない処遇改善に向けて、次の措置がとられています。
- 処遇改善加算の対象が、介護職員のみから、介護従事者に拡大された
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する、上乗せの加算区分(Ⅰロ・Ⅱロ)が設けられた
- これまで処遇改善加算の対象外だった、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に、新たに処遇改善加算が設けられた
訪問看護の加算率
| サービス | 加算率(令和8年6月以降) |
|---|---|
| (介護予防)訪問看護 | 1.8% |
告示(令和8年厚生労働省告示第87号、令和8年6月1日施行)では、訪問看護費の「介護職員等処遇改善加算」は、訪問看護費のイからリまでにより算定した単位数の1000分の18に相当する単位数を、所定単位数に加算するとされています。介護予防訪問看護費は、イからトまでにより算定した単位数の1000分の18です。
- 加算率は、1つだけです。訪問介護などの、ⅠイからⅣまでの区分は、訪問看護にはありません。
- 単位数は、基本サービス費に、各種の加算・減算(処遇改善加算を除く)を加えた1月あたりの総単位数に、加算率を乗じて算定します。
- 処遇改善加算は、区分支給限度基準額の算定対象から除外されます。
- 令和8年4月と5月は、訪問看護は加算の算定対象外です。令和8年6月以降が対象です。
- 届出は、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対して、老健局長が定める様式で行います(告示)。
算定要件
訪問看護が処遇改善加算を算定するには、賃金改善の実施に加えて、次の①または②のいずれかを満たす必要があります。
① 令和8年度特例要件(生産性向上や協働化の取組)
次のいずれかを行っていること。
- ケアプランデータ連携システム(厚生労働省が、同等の機能とセキュリティを有するシステムとして認めたものを含む)を利用していること
- 事業所が所属する法人が、社会福祉連携推進法人に所属していること
「同等の機能とセキュリティを有するシステム」は、令和8年3月13日時点で、次の4つが該当するとされています(最新の認定状況は、厚生労働省のページで確認します)。
- カナミッククラウドサービス(株式会社カナミックネットワーク)
- ケアプランデータ連携サービス(株式会社富士通四国インフォテック)
- 「でん伝虫」データ連携サービス(株式会社コンダクト)
- まめネット ケアプラン交換サービス(特定非営利活動法人 しまね医療情報ネットワーク協会)
② 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件(次の(ⅰ)〜(ⅲ)をすべて満たすこと)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (ⅰ) キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等) | 職員の任用の際の、職位・職責・職務内容等に応じた任用等の要件と、それに応じた賃金体系を定め、就業規則等の明確な根拠規程を、書面で整備し、全ての職員に周知していること。「就業規則等」の「等」には、法人全体の取扱要領や、就業規則の作成義務のない事業場(常時雇用する者が10人未満)における内規等が、想定されています。 |
| (ⅱ) キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等) | 職員の職務内容等を踏まえ、職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と具体的な計画を策定し、研修の実施または研修の機会を確保して、全ての職員に周知していること(計画に沿った研修機会の提供や技術指導と能力評価、または、資格取得のための支援)。計画の様式や期間の定めはなく、賃金改善実施期間と合っていなくても構いません。 |
| (ⅲ) 職場環境等要件 | 「入職促進」「資質の向上・キャリアアップ支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに1以上、「生産性向上のための取組」のうち2以上を実施すること(1法人に1つの事業所のみを運営する小規模事業者は、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組を実施していれば、生産性向上の取組の要件を満たします)。各項目は、列挙されている取組のうち、1つ以上を満たせばよく、前年度から継続して算定する場合は、従前の取組を継続していれば足ります。 |
令和8年度の「誓約」の取扱い
令和8年度は、申請の時点で要件を満たしていなくても、次の場合は、満たしているものとして扱われます。
- 令和8年度特例要件:ケアプランデータ連携システムに、加入し、利用することを誓約した場合。令和9年3月末までに、システムを利用したうえで、実績報告書で、利用実績を報告します。加入だけではなく、利用が必要です。
- 上の②の要件:処遇改善計画書で、令和9年3月末までに、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱの整備と、職場環境等要件の取組を行うことを誓約した場合。令和9年3月末までに整備して、実績報告書で報告します。
特例要件は、基本的には、令和8年6月以降の算定に係る要件です。
賃金改善のルール
- 加算額に相当する、職員の賃金(基本給、手当、賞与等。退職手当を除く)の改善を行います。賃金改善に伴う、法定福利費等の事業主負担の増加分を、含めることができます。
- 賃金改善の額は、加算を原資として賃金改善を実施した後の実際の賃金水準と、加算を算定しない場合の賃金水準との比較で、算出します。加算を算定しない場合の賃金水準は、原則として、初めて処遇改善加算(または、旧3加算、交付金等)を算定した年度の前年度の賃金水準です。推計が困難な場合や、新規に開設した場合は、処遇改善加算を除いた介護報酬の総単位数の見込額に基づく、営業計画・賃金計画を策定して、試算するなどの方法でも構いません。
- 賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち、対象とする項目を特定したうえで行います。基本給による賃金改善が望ましいとされています。時給や日給の引上げは、基本給の引上げとして、取り扱って構いません。
- 令和7年度と比較して増加した加算額(新規に算定する場合を含みます)について、過去の賃金改善の実績にかかわらず、新たに賃金改善を行います。その際は、ベースアップ(賃金表の改訂による、一律の引上げ)によることが基本です。
- 特定した項目を含めて、賃金水準を低下させてはいけません。ただし、事業の継続のために引き下げる場合は、合理的な理由に基づき、適切に労使の合意を得たうえで、特別事情届出書の提出が必要です。賃金全体の水準が下がっていなければ、個々の賃金項目が下がっても、特別事情届出書の提出は不要です。
- キャリアパス要件や職場環境等要件を満たすための費用は、賃金改善額に含められません。
- 賃金改善の実施月(支給時期)は、算定対象月と同じでなくても構いません(例:6月に算定する加算の配分を、6月中、7月中、または、報酬が振り込まれる8月中に、支払うパターン)。
- 法定福利費は、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等について、処遇改善加算による賃金改善分に応じて増加した、事業主負担分です。合理的な方法による概算でも構いません。任意加入の制度(退職手当共済制度等)の掛金は、含みません。
- 賃金改善額が、加算額を下回った場合は、返還の対象になります。不足分を、賞与等の一時金として職員に追加で配分する場合は、返還を求めない取扱いも可能とされています。
誰に配分できる?
事業所内の配分は、事業所内で柔軟に行えます。対象には、介護職員以外の全職種が含まれます(看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護支援専門員、事務職等が例に挙げられています)。処遇改善加算による賃金改善以前の賃金が、年額440万円以上の職員も、対象に含められます。
- 派遣労働者:派遣元と相談したうえで、対象にできます。処遇改善計画書や実績報告書に、派遣労働者を含めて作成します。在籍型の出向者や業務委託職員も、同様です。
- 法人本部の職員:加算の算定対象となるサービス事業所での業務を行っていると判断できる場合は、対象に含められます。
- 代表取締役等の役員:事業所の業務を行っていると判断できる場合は、対象に含められます。
ただし、一部の職員や、同一法人内の一部の事業所のみに、賃金改善を集中させるような、職務の内容や勤務の実態に見合わない、著しく偏った配分は行えません。また、加算を算定していない事業所(加算の対象外のサービスや、介護保険以外のサービスの事業所)の職員は、この加算を原資とする賃金改善の対象に含められません。
届出と報告
令和8年6月から算定を開始する場合(令和8年度)
| 手続き | 提出先 | 期日 |
|---|---|---|
| 体制届出(体制等状況一覧表等) | 都道府県知事等(指定権者) | 居宅系サービスは、算定を開始する月の前月15日。令和8年6月から新設された、訪問看護などの事業所のみが所属する事業者が、6月以降に算定する場合は、令和8年5月15日(ただし、都道府県知事等は、6月15日としても構いません) |
| 処遇改善計画書 | 同上 | 加算新設事業所のみが所属する事業者が、令和8年6月以降に算定する場合は、令和8年6月15日 |
| 実績報告書 | 同上 | 各事業年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日まで |
令和8年7月以降に算定を開始する場合:体制届出は、算定を開始する月の前月15日まで。処遇改善計画書は、その事業年度に初めて処遇改善加算を算定する月の前々月の末日までです。
- 複数の事業所を持つ事業者は、処遇改善計画書と実績報告書を、法人単位で一括して作成できます。
- 計画書・報告書の内容を証明する資料は、2年間保存し、指定権者から求められたときは、速やかに提示します。
- 様式に、押印は必要ありません。
- 計画書の内容に変更がある場合は、変更届出書(別紙様式4)を提出します。
管理者が確認しておきたいこと

- 要件:特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用など)か、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、職場環境等要件の、どちらの道で算定するか
- 賃金改善:令和8年度の加算額に見合う賃金改善の方法(項目)を決めて、職員に周知しているか。賃金の水準を、下げていないか
- 誓約した内容:令和9年3月末までに、システムの利用や、規程・計画の整備を、終えられるか
- 配分:一部の職員や、一部の事業所に偏っていないか。対象外の事業所の職員に、配分していないか
- 実績報告書:各事業年度の最終の加算支払月の翌々月末日の提出に向けて、賃金改善の記録や、根拠資料を保管しているか
よくある質問
Q. 医療保険の訪問看護にも、この加算は算定できますか?
A. この加算は、介護保険の訪問看護(介護予防訪問看護を含む)が対象です。医療保険の訪問看護については、物価対応料・ベースアップ評価料の記事を、確認してください。
Q. 令和8年4月と5月にも、算定できますか?
A. 訪問看護は、令和8年4月と5月は、算定の対象外です。令和8年6月以降が、対象です。
Q. ケアプランデータ連携システムに、加入しただけでも、特例要件を満たしますか?
A. 加入だけでは、足りません。利用することが必要で、実績報告書に、利用実績を記載します。申請時点で利用していない場合は、加入・利用を誓約すれば、申請できます。
Q. 特例要件の根拠となる資料は、提出が必要ですか?
A. 一律の提出は求められませんが、指定権者から求められたときに、速やかに提出できるよう、根拠資料を用意しておきます(保存期間は2年間)。例として、ケアプランデータ連携システムでは、データの送信または受信の記録がわかる、使用画面のスクリーンショットが挙げられています。
Q. 賃金改善額が、加算額を下回ったら?
A. 算定要件を満たさないものとして、返還の対象になります。ただし、不足する部分を、賞与等の一時金として、職員に追加で配分すれば、返還を求めない取扱いも可能とされています。
Q. 看護師や、事務職員にも配分できますか?
A. できます。事業所内の配分は柔軟に行え、対象には、介護職員以外の全職種が含まれます。ただし、著しく偏った配分は行えません。
まとめ
- 訪問看護(介護予防を含む)は、令和8年6月から、介護職員等処遇改善加算の対象になり、加算率は1.8%(告示では、イからリまでにより算定した単位数の1000分の18)
- 算定には、賃金改善の実施に加えて、令和8年度特例要件、または、処遇改善加算Ⅳに準ずる要件が必要
- 令和8年度は、要件を満たすための取組を、令和9年3月末までに行うことを誓約して、申請できる
- 賃金改善は、加算額以上を、職員の賃金に配分する。賃金水準は下げない。実績報告書は、各事業年度の最終の加算支払月の翌々月末日までに提出
最新の加算率や算定ルールは、必ず厚生労働省の資料や通知で確認してください。
関連記事:訪問看護の診療報酬改定まとめ|2026年度の変更点を解説/訪問看護物価対応料とベースアップ評価料の算定実務|2026年改定のポイント(医療保険)/加算一覧
出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第87号、令和8年3月13日)/同 老健局「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日 老発0313第6号)/同「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年3月13日)
最終確認日:2026年10月15日 ※制度は改定されるため、最新情報をご確認ください。