介護保険の訪問看護、同一建物に住む利用者への訪問は減算になる?
訪問看護ステーションと同じ建物や、同じ敷地内の建物に住む利用者に訪問看護を行う場合、区分に応じて減算されます。医療保険にも同様の減算がありますが、介護保険は区分や割合が異なります。
この記事では、厚生労働省の告示に沿って、介護保険の訪問看護における、同一建物減算の区分と算定ルールを整理します。
※この記事は、介護保険の訪問看護について扱います。

この記事で分かること・まず確認すること
次の3つを順番に確認すると、自分の事業所が対象かどうかが分かります。
- 保険の種類:対象の利用者は、介護保険の訪問看護の対象か(医療保険の対象なら、この記事とは別のルールです)
- 建物の該当性:訪問先の建物が、事業所と一体的な建築物か、同一敷地内・隣接する敷地内の建物か、またはそれ以外で20人以上が住む建物か
- 利用者数:その建物に居住する、自分の事業所の利用者が、1か月あたり何人か
ただし、建物の所在地や人数だけで機械的に判定できない場合もあります(「同一敷地内建物等」に該当するかは、構造上・外形上の一体性や、効率的なサービス提供につながるかという考え方も関わります。詳しくは、後述の「同一敷地内建物等の定義」をご覧ください)。迷う場合は、保険者(市区町村)への確認をおすすめします。
結論:減算区分と割合
厚生労働省告示「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和8年6月1日施行版)訪問看護費の注8に、次のとおり定められています。
指定訪問看護事業所の所在する建物と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問看護事業所と同一の建物(以下この注において「同一敷地内建物等」という。)に居住する利用者(指定訪問看護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)又は指定訪問看護事業所における1月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く。)に居住する利用者に対して、指定訪問看護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定し、指定訪問看護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者に対して、指定訪問看護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の85に相当する単位数を算定する。
整理すると、次の表のとおりです。
| 区分 | 対象となる建物・利用者の条件 | 減算の割合 |
|---|---|---|
| 10%減算 | 同一敷地内建物等に居住する利用者(50人以上の建物を除く)、または同一敷地内建物等に該当しない建物で、自事業所の利用者が20人以上居住する建物の利用者 | 所定単位数の100分の90(10%減算) |
| 15%減算 | 同一敷地内建物等に居住する利用者のうち、自事業所の利用者が50人以上居住する建物の利用者 | 所定単位数の100分の85(15%減算) |
15%減算は、「同一敷地内建物等」に限って適用されます。同一敷地内建物等に該当しない、単なる「同一建物」で50人以上という場合は、告示上、15%ではなく10%減算の区分にとどまります。この違いは混同しやすいため、注意してください。

準用の根拠
訪問看護の同一建物の取扱いは、告示の運用通知である老企第36号(「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」)の、第三・10・(14)に、次のとおり定められています。
(14)指定訪問看護事業所と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問看護事業所と同一の建物等に居住する利用者に対する取扱い
訪問介護と同様であるので、2(16)①〜⑤を参照されたい。
つまり、訪問看護独自の詳しい説明ではなく、同じ通知の第三・2・(16)①〜⑤(訪問介護費の同一建物規定の解説部分)を、そのまま読み替えて適用する形になっています。
「同一敷地内建物等」の定義
老企第36号(訪問介護部分、厚生労働省公式資料で原文確認)には、次のとおり定義されています。
「同一敷地内建物等」とは、当該指定訪問介護事業所と構造上又は外形上、一体的な建築物及び同一敷地内並びに隣接する敷地(当該指定訪問介護事業所と建築物が道路等を挟んで設置している場合を含む。)にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能なものを指すものである。
つまり、「同一敷地内建物等」の判断は、建物の位置関係だけでなく、「効率的なサービス提供が可能かどうか」という観点も踏まえたものとされています。具体的には、次のような場合が該当するとされています。
- 一体的な建築物:建物の1階部分に事業所がある場合、建物と渡り廊下でつながっている場合など
- 同一の敷地内・隣接する敷地内の建物:同一敷地内にある別棟の建築物、幅員の狭い道路を挟んで隣接する場合など
利用者数の数え方・計算例
老企第36号(訪問介護部分の準用)に、人数の数え方が、次のとおり定められています(複数の自治体公式資料で確認)。
この場合、1月間の利用者の数の平均は、当該月における1日ごとの該当する建物に居住する利用者の合計を、当該月の日数で除して得た値とする。この平均利用者数の算定に当たっては、小数点以下を切り捨てるものとする。
ここで数えるのは、「訪問した人数」ではなく、「その建物に居住している、自事業所の利用者数」です。1日の中で訪問の有無にかかわらず、その日その建物に居住している利用者を、日ごとにカウントします。整理すると、次の手順です。
- その月の1日ごとに、該当する建物に居住している(自事業所の)利用者の人数を記録する(その日に訪問したかどうかではなく、居住しているかどうかで数えます)
- その月の全日数分を合計する
- 合計を、その月の日数で割る(平均を出す)
- 平均利用者数の小数点以下を切り捨てる
計算例(説明用の数値です。実際の算定条件と混同しないでください)
ある建物に、自事業所の利用者が、月の前半(15日間)は18人居住し、月の後半(15日間、30日まで)は新たな入居があり22人居住していた場合(30日の月と仮定)
- 合計:18人×15日+22人×15日=270+330=600(人・日)
- 平均:600 ÷ 30日=20人
この平均人数は、あくまで「20人以上」の条件を満たすかどうかの判断材料です。実際にどの区分(10%・15%)が適用されるかは、まずその建物が同一敷地内建物等に該当するかどうかを確認したうえで、判断する必要があります。平均人数だけで、区分を直接決められるわけではありません。実際の計算では、該当する建物に居住する利用者の実数を、1日ごとに正確に集計してください。

実務のポイント・管理者チェックリスト
- 保険の判定が先:同一建物減算を見る前に、その利用者が介護保険の対象かどうかを確認する
- 建物の該当性の確認:事業所と一体的な建築物か、同一敷地内・隣接する敷地内の建物か、それ以外で20人以上が住む建物かを確認する。位置関係だけでなく、効率的なサービス提供につながるかという観点も踏まえる
- 15%減算の条件:50人以上の15%減算は、「同一敷地内建物等」に限られることを確認する(単なる同一建物の50人以上は10%)
- 利用者数の集計:「訪問した人数」ではなく、「居住している利用者数」を、1日ごとに記録・合計し、月の日数で割って平均を出し、小数点以下を切り捨てる
- 判定の順序:建物の該当性を確認したうえで、利用者数の平均から減算区分を判断する
- 最新資料との照合:告示・サービスコード表の内容と、実際の算定が一致しているか確認する
よくある質問
Q. 同じ建物に利用者が何人いると、減算になりますか?
A. 同一敷地内建物等であれば、人数にかかわらず対象です(ただし50人以上かどうかで割合が変わります)。同一敷地内建物等に該当しない場合は、自事業所の利用者が20人以上居住する建物が対象です。
Q. 20人以上と50人以上では、何が違いますか?
A. 20人以上(同一敷地内建物等でない場合を含む)は10%減算です。50人以上は、同一敷地内建物等に限り15%減算になります。同一敷地内建物等でない建物が50人以上でも、15%にはなりません。
Q. 利用者数は、どのように数えますか?
A. 「訪問した人数」ではなく、「その建物に居住している自事業所の利用者数」を、1日ごとに数えます。1月間(暦月)の1日ごとの人数を合計し、その月の日数で割った平均を使います。小数点以下は切り捨てます。
Q. 同一敷地内建物等に該当するか分からない場合は、どうすればよいですか?
A. 構造上・外形上の一体性、敷地の位置関係に加えて、「効率的なサービス提供が可能かどうか」という観点も踏まえた、個別の判断になります。判断に迷う場合は、保険者(市区町村)に確認することをおすすめします。
Q. 医療保険の訪問看護にも、同じルールが適用されますか?
A. いいえ。医療保険と介護保険では、同一建物減算の算定ルールが異なります。実際の訪問看護に適用される保険制度を確認し、それぞれの要件に沿って判断してください。医療保険の同一建物減算については、こちらの記事で解説しています。
まとめ
- 同一建物減算を見る前に、まず利用者が介護保険の対象かどうかを確認する
- 「同一敷地内建物等」は、事業所と一体的な建築物や、同一敷地内・隣接する敷地内の建物を指す。位置関係に加え、効率的なサービス提供が可能かという考え方も踏まえられている
- 10%減算:同一敷地内建物等(50人未満)、または同一敷地内建物等でない20人以上の建物
- 15%減算:同一敷地内建物等で50人以上(同一敷地内建物等でない建物が50人以上でも15%にはならない)
- 利用者数は、「居住している利用者数」を1日ごとに数え、1月間(暦月)の平均で計算し、小数点以下を切り捨てる。ただし、区分の判定は、建物の該当性を確認したうえで行う
最新の算定ルールは、必ず厚生労働省の資料や通知で確認してください。
関連記事:訪問看護の同一建物減算とは|2026年改定の5区分を解説(医療保険)/訪問看護は医療保険と介護保険どちらで?|判断基準を整理(2026年度版)/制度一覧
出典
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号、令和8年6月1日施行版)訪問看護費 注8(10%・15%減算の金額根拠)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第三・10・(14)(訪問看護への準用根拠)、全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム
- 老企第36号(同上)第三・2・(16)①(「同一敷地内建物等」の定義・効率的なサービス提供の考え方):介護保険最新情報Vol.1213(令和6年3月15日、厚生労働省老健局)
- 介護給付費単位数等サービスコード表(令和8年6月・8月施行版)(単位数の確認)
最終確認日:2026年10月19日 ※制度は改定されるため、最新情報をご確認ください。