訪問看護の同一建物減算とは|2026年改定の5区分を解説(医療保険)

「同一建物減算って、結局どういうルールなの?」
2026年6月の診療報酬改定で、訪問看護の同一建物の評価が大きく変わりました。とくに、これまで「3人以上」でひとまとめだった区分が細かく分かれ、算定の間違いが起きやすくなっています。
この記事では、同一建物減算の基本から、2026年度改定で何が変わったかまで、現場で確認できる形で整理します。
※この記事は医療保険の訪問看護が対象です。介護保険の同一建物減算は別の仕組みなので、ここでは扱いません。

同一建物減算とは?まず基本を整理

医療保険では、「減算」という名前の項目があるわけではありません。同一建物に居住する利用者へ、同じ日に訪問する場合は、**基本療養費(Ⅱ)**という別の区分で、低い点数が定められています。現場では、これを一般に「同一建物減算」と呼びます。

訪問看護基本療養費は、次のように分かれています。

  • 基本療養費(Ⅰ):同一建物居住者ではない利用者への訪問
  • 基本療養費(Ⅱ):同一建物居住者への訪問(同一日の人数によって、単価が変わる)

同一建物居住者とは

基本的には、建築基準法上の建築物(同一敷地内のものを含む)に居住する、複数の利用者のことです。具体的には、次のような利用者です。

  • 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、マンションなどの集合住宅等に、入居・入所している複数の利用者
  • 短期入所生活介護、小規模多機能型居宅介護(宿泊サービスに限る)、認知症対応型共同生活介護などを、同一建物で受けている複数の利用者
  • 上の集合住宅等の建物が、同一敷地内にある場合の、それらに居住・入居・入所している複数の利用者

告示では、同一建物居住者を、「当該者と同一の建物又は同一の敷地内の建物に居住する他の者に対して、そのステーションが同一日に指定訪問看護を行う場合の当該者」と定めています。

人数の数え方

ポイントは、その日に何人訪問したかで単価が決まることです。「入居者が何人いるか」ではなく、同一日に、基本療養費を算定する利用者数、精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者数、包括型訪問看護療養費を算定する利用者数を、合算した人数で数えます。

2026年度改定の全体像

2026年6月1日施行の改定で、同一建物まわりは、主に次の4点が変わりました。

  1. 同一日の人数の区分が、細かく分かれた
  2. 1月あたりの訪問日数でも、単価が分かれるようになった
  3. 同一建物の範囲に、同一敷地内の建物が含まれることが、規定された
  4. 訪問時間の考え方が、明確になった

変更点①:人数が「5区分」に

これまで、基本療養費(Ⅱ)は「2人」と「3人以上」の2区分でした。改定後は、次の5区分です。

2人 / 3〜9人 / 10〜19人 / 20〜49人 / 50人以上

イ(保健師・助産師・看護師)の単価

同一日の人数改定前改定後
2人週3日目まで5,550円/週4日目以降6,550円変更なし
3〜9人週3日目まで2,780円/週4日目以降3,280円(3人以上として)変更なし
10〜19人同上月20日目まで2,760円/月21日目以降2,660円
20〜49人同上月20日目まで2,710円/月21日目以降2,610円
50人以上同上月20日目まで2,610円/月21日目以降2,510円

ロ(准看護師)・ニ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の単価(改定後)

同一日の人数ロ(准看護師)ニ(理学療法士等)
2人週3日目まで5,050円/週4日目以降6,050円5,550円
3〜9人週3日目まで2,530円/週4日目以降3,030円2,780円
10〜19人月20日目まで2,520円/月21日目以降2,420円月20日目まで2,760円/月21日目以降2,660円
20〜49人月20日目まで2,470円/月21日目以降2,370円月20日目まで2,710円/月21日目以降2,610円
50人以上月20日目まで2,370円/月21日目以降2,270円月20日目まで2,610円/月21日目以降2,510円
  • 10人以上の区分では、1月あたりの訪問日数が、20日目までか21日目以降かでも、単価が分かれます。この日数は、基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)、精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)、包括型訪問看護療養費の合計算定日数で数えます。月の後半ほど点数が下がるので、訪問日数の管理が欠かせません。
  • 基本療養費(Ⅱ)は、利用者1人につき、週3日が限度です(基準告示第2の1の疾病等、つまり別表第7・8の利用者などを除く)。

変更点②:「同一建物」に同一敷地内の建物が含まれる

改定後は、同一建物居住者に、同一敷地内の建物に居住する利用者が含まれることが、規定されました。

「同一敷地内」に当たるのは、次の場合です。

  • 同一地番の敷地内である場合
  • 同一地番ではなくても、公道に出ずに敷地を行き来できるなど、一体的に利用されている敷地である場合

ただし、広大な敷地に複数の建物が点在し(UR等の大規模団地や、敷地に沿って複数のバス停留所があるような規模)、他者が占有する土地で隔てられて、建物と建物の距離が離れている場合は、同一建物の利用者を訪問する場合とは移動時間が明らかに異なるため、含まれません。

たとえば、同じ敷地にA棟・B棟がある有料老人ホームでは、これまで棟ごとに数えていた人数を、合算して数えることになります。合算した結果、区分が変わり、単価が下がる場合があります。

変更点③:訪問時間のルールが明確になった

指定訪問看護の実施時間は、1回の訪問につき、基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)とも、30分から1時間30分程度が標準とされています。訪問看護計画に沿って行い、漫然かつ画一的なものにならないよう、明記されました。標準の時間を下回る訪問が、同一日に同一の利用者に複数回、または複数の利用者に頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したとは認められません(利用者側のやむを得ない事情による場合などを除く)。

基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)を算定するときの留意事項は、次のとおりです。

  • 算定するのは、適切な時間の訪問です。30分以上を標準とし、少なくとも20分を下回らないことが必要です。実施した内容は、訪問看護記録書に記載します。
  • 前回の訪問の終了から2時間未満の間隔で、20分以上30分未満の訪問を行う場合(緊急の訪問を除く)は、それぞれの時間を合算して、1回の訪問として扱います。
  • 1人の看護師等が訪問した後に、続けて別の看護師等が訪問する場合は、提供時間を合算します。合算した時間に、准看護師の訪問が含まれる場合は基本療養費(Ⅱ)のロ、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の訪問が含まれる場合は、基本療養費(Ⅱ)のニを算定します。

毎回の訪問時には、訪問年月日、実施した内容、実際に要した時間などを、訪問看護記録書に記載します。

加算にも影響がある

基本療養費だけでなく、次の加算も、同一建物の人数に応じた評価に見直されました。

  • 難病等複数回訪問加算、精神科複数回訪問加算
  • 夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算
  • 複数名訪問看護加算、複数名精神科訪問看護加算

加算の人数区分は、基本療養費(Ⅱ)と違い、「同一建物内1〜2人」「3〜9人」「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」の5つです。人数は、同一日に、その加算(または対応する精神科の加算)、あるいは包括型訪問看護療養費を算定する、同一建物居住者の合計人数です。加算によっては、月の算定日数でも、単価が分かれます。

たとえば夜間・早朝訪問看護加算は、改定前は一律2,100円でした。改定後は、次のとおりです。

同一建物内の人数月15日目まで月16日目以降
1人または2人2,100円2,100円
3〜9人2,100円1,900円
10〜19人1,800円1,300円
20〜49人1,200円950円
50人以上1,000円800円

なお、高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが、24時間体制で頻回の訪問を行う場合には、新たに「包括型訪問看護療養費」(1日につき算定)が設けられています。詳しくは、包括型の記事で解説しています。

現場・管理者が確認しておきたいこと

  1. 人数と訪問日数を見える化する:同一敷地内の人数と、月ごとの訪問日数を、その場で把握できるようにします。人数は、同一日に、基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、包括型を算定する利用者の合計です。
  2. 訪問時間を見直す:30分以上を標準として、20分を下回る訪問がないか、2時間未満の間隔の短時間訪問を、合算していないものがないかを確認します。
  3. 記録を徹底する:実際の訪問時間と、記録の時間が一致しているか、スタッフ全員で揃えます。
  4. 収益を試算し直す:大規模施設への訪問が多い場合は、新しい区分に当てはめて、収支を見直します。

よくある質問

Q. 入居者が20人いる施設で、その日に8人訪問した場合は?
A. 区分は入居者数ではなく、同一日の訪問人数で決まります。この場合は、「3〜9人」の区分です。

Q. 同一建物に居住する利用者に、その日は1人しか訪問しなかった場合は?
A. 同一建物居住者は、告示で、同一の建物または同一敷地内の建物に居住する「他の者」に、同一日に訪問する場合の当該者と定められています。他に訪問する者がいない場合は、同一建物居住者にならないため、基本療養費(Ⅰ)で算定します。

Q. 同じ敷地に2棟ある場合、棟ごとに数えてもいいですか?
A. 同一敷地内の建物も、同一建物として扱われるため、合算して数えます。ただし、他者の土地で隔てられた、大規模団地のような場合は、含まれません。

Q. 訪問が20分に満たなかった場合は?
A. 20分を下回る訪問は、基本療養費(Ⅱ)を算定できません。前回の訪問の終了から2時間未満の間隔で、20分以上30分未満の訪問をした場合は、時間を合算して、1回として扱います(緊急の訪問を除く)。

Q. 介護保険の訪問看護でも同じ区分ですか?
A. この記事の内容は医療保険の話です。介護保険の同一建物減算は別の仕組みです。

まとめ

  • 医療保険の同一建物減算は、同一日の訪問人数で単価が決まる、基本療養費(Ⅱ)の仕組み
  • 2026年6月から、基本療養費(Ⅱ)の人数区分は5区分になり、10人以上では、月の算定日数(20日目まで・21日目以降)でも単価が分かれる
  • 同一敷地内の建物も、同一建物として合算される(ただし、大規模団地のような場合は含まれない)
  • 訪問時間は、30分以上を標準として、20分を下回らないこと。2時間未満の間隔の短時間訪問は、合算する
  • 加算も同じ考え方で見直され、人数が多いほど点数が下がる

最新の点数や算定ルールは、必ず厚生労働省の資料や通知で確認してください。

関連記事:訪問看護の診療報酬改定まとめ|2026年度の変更点を解説/包括型訪問看護療養費とは|2026年新設の対象と算定要件(医療保険)/加算一覧

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年9月4日版)/訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(令和8年厚生労働省告示第74号)/算定留意事項通知(令和8年3月5日 保発0305第19号)/疑義解釈資料(その1)/中央社会保険医療協議会 総会(第647回)資料 総-1「個別改定項目について」(令和8年2月13日)
最終確認日:2026年9月21日 ※制度は改定されるため、最新情報をご確認ください。

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