複数名訪問看護加算とは|医療保険・介護保険の対象者と金額・単位数

複数名訪問看護加算は、どのような場合に算定できるのでしょうか?
複数名で訪問看護を行う場合、医療保険では「複数名訪問看護加算」、介護保険では「複数名訪問加算」が関係します。両者は名称だけでなく、対象者や金額・単位数も異なります。また、複数名で訪問しただけで自動的に算定できるわけではありません。
この記事では、医療保険と介護保険それぞれの対象者、金額・単位数、同行する職員の組み合わせ、算定上の注意点を整理します。
※精神科訪問看護の「複数名精神科訪問看護加算」は別の加算です。

複数名訪問看護加算・複数名訪問加算とは

体重の重い利用者の体位変換や、暴力行為のリスクがある利用者への対応など、1人の看護師等では訪問看護が難しい場面があります。そうしたときに、2人の職員が同時に訪問した場合につく加算です。

医療保険では「複数名訪問看護加算」、介護保険では「複数名訪問加算」と、名称が少しだけ違います。どちらも共通して言えるのは、「単に2人で訪問した」というだけでは算定できないということです。利用者が決められた対象者に当てはまることと、利用者又はその家族等の同意が必要です。

医療保険:対象者

「対象者」とは、複数名で訪問することが認められている利用者の条件です。基準告示という厚生労働省の告示に、次のいずれかに該当する利用者(1人の看護師等による訪問看護が困難な利用者)と定められています。

  • イ:別表第7に掲げる疾病等の者(末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症など、あらかじめ決められた重い病気の利用者です)
  • ロ:別表第8に掲げる者(気管カニューレの使用、在宅酸素療法、真皮を越える褥瘡など、あらかじめ決められた状態の利用者です)
  • ハ:特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者(急な状態悪化のときに、主治医が発行する指示書です)
  • ニ:暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者
  • ホ:利用者の身体的理由により、1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者(区分ハの場合に限る)
  • ヘ:その他、イ〜ホのいずれかに準ずると認められる者(区分ハの場合に限る)

ここで言う「別表第8」は、あくまで複数名訪問看護加算の対象者要件の1つです。 「要介護の利用者が、別表第8に該当するだけで医療保険に切り替わる」という意味ではありません。保険の適用そのものがどちらになるかという判定と、複数名訪問看護加算の対象者要件は、別の論点です。詳しくは、この記事の「医療保険と介護保険、どちらで算定するか」の章で整理しています。

新人のうちに押さえておきたいポイント:「対象者に当てはまるかどうか」を、訪問の前に確認することが大切です。管理者や先輩に、「この利用者は複数名訪問の対象になりますか」と確認する習慣をつけておくと安心です。

医療保険:区分と金額

「同一建物内の人数」とは、同じ建物に居住する利用者のうち、同じ日に複数名訪問看護加算等を算定する利用者の人数です。実際に訪問する職員の人数や、建物に住んでいる全員の人数ではありません。算定区分や回数による取り扱いもあるため、実際の請求では告示・通知を確認してください。

この人数に応じて、次のいずれかを1日につき加算します。

区分1〜2人3〜9人10〜19人20〜49人50人以上
イ:看護職員が他の看護師等(准看護師を除く)と同時4,500円4,000円3,400円3,000円2,700円
ロ:看護職員が他の准看護師と同時3,800円3,400円2,800円2,500円2,200円
ハ:看護職員がその他職員と同時(原則)3,000円2,700円2,100円1,900円1,600円

区分ニ(その他職員と同時)は、1日の算定回数に応じて、次のいずれかを算定します(回数の上限なし)。

回数1〜2人3〜9人10〜19人20〜49人50人以上
1日1回3,000円2,700円2,100円1,900円1,600円
1日2回6,000円5,400円3,800円3,450円3,300円
1日3回以上10,000円9,000円5,500円4,800円4,500円

対象者区分と算定区分の対応関係(整理)

複数名訪問看護加算には、「対象者の区分(イ〜ヘ)」と「算定する区分(イ〜ニ)」の、2種類の「イ〜ニ」が登場します。記号が同じなので混同しやすい点に、注意してください。

算定区分対象者区分同時に訪問する職員
イ対象者区分イ〜ニ看護師等(准看護師を除く)
ロ対象者区分イ〜ニ准看護師
ハ対象者区分ニ〜ヘその他職員
ニ対象者区分イ〜ハその他職員

表の読み方のコツ:同じ建物に住んでいる人数そのものではなく、その日に対象となる加算等を算定した利用者の合計人数を確認します。訪問する職員が2人であることと、人数区分の数え方は別なので、注意しましょう。

医療保険:算定のルール

  • イ・ロの場合は週1日、ハの場合は週3日を限度とします。ニには、週の算定日数の上限はありません。
  • 同時に複数の看護師等による訪問看護を行う場合、1人以上は看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)である必要があります。事務職員2人だけで訪問しても算定できません。
  • 看護職員と同行するその他職員は、常に同行の必要はありませんが、利用者の居宅で両者が同時に滞在する一定の時間が確保された場合に算定できます。玄関先ですれ違っただけでは足りません。
  • 単に2人の看護師等又は看護補助者が同時に訪問したことのみをもって、算定することはできません。「たまたま2人になった」では算定できず、対象者の条件と同意が前提です。

複数名訪問看護加算そのものについて、今回確認した算定告示・留意事項通知では、医師による個別の指示を独立した要件とする記載は確認できませんでした。対象者イ〜ヘに当てはまるかどうかが要件です。ただし、対象者ハの「特別訪問看護指示書」自体は、医師が交付する指示書であり、その交付要件は別途確認が必要です。名称の似た「複数名精神科訪問看護加算」には、医師が複数名訪問の必要性を認め、精神科訪問看護指示書に記載がある場合という要件がありますが、これは別の加算です。

介護保険:単位数とⅠ・Ⅱの違い

厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(厚生省告示第19号)、および「令和8年6月改定箇所 指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造」で、次の単位数を確認できました。

加算組み合わせ訪問時間30分未満訪問時間30分以上
複数名訪問加算(Ⅰ)看護師等+看護師等254単位402単位
複数名訪問加算(Ⅱ)看護師等+看護補助者201単位317単位

訪問看護費の基本単位数に加算する形で算定します。訪問時間の区分は、複数名訪問加算の算定基準に定められた所要時間の区分に従って判断します。実際の算定では、訪問看護の所要時間と複数名で対応した状況を記録し、該当する算定基準・留意事項通知を確認してください。「看護補助者」とは、看護師等の指導のもとで、身の回りの世話や環境整備を行う職員のことです。

介護保険:算定できる条件

※この項目は、厚生労働省の一次資料ではなく、株式会社ビジケアの記事(2026年5月31日公開)を出典としています。

利用者又はその家族等の同意を得たうえで、次のいずれかに該当する場合に算定できるとされています。

  1. 身体的理由により、1人の看護師等による訪問看護が困難な場合(体重が重く移乗・体位変換に2名が必要、医療的処置と同時に他のケアが必要など)
  2. 暴力行為・著しい迷惑行為・器物破損行為等が認められる場合
  3. その他、利用者の状況等から判断して、1・2に準ずると認められる場合

身体的理由で算定する場合は、その理由を訪問看護記録書に具体的に記載しておくことが必要とされています。「なぜ2人必要だったか」が後から読んでもわかるように書くことが大切です。

この項目(算定できる条件)は、二次資料のみを根拠としています。正確な対象者・同意・記録の要件は、該当する算定基準・留意事項通知で、あわせてご確認ください。

医療保険と介護保険、どちらで算定するか

新人のうちに混乱しやすいのが、この点です。複数名訪問看護加算(医療保険)・複数名訪問加算(介護保険)は、この加算だけを自分で選んで使えるものではありません。まず、その利用者の訪問看護そのものが、医療保険と介護保険のどちらで算定されているかが決まっていて、それに応じて、どちらの複数名加算を使うかが自動的に決まります。

医療保険と介護保険のどちらで訪問看護を算定するかの基準は、関連記事「訪問看護は医療保険と介護保険どちら?」で解説しています。ざっくり言うと、要支援・要介護の利用者は、原則として介護保険です。ただし、別表第7に該当する場合や、特別訪問看護指示書の交付を受けた場合、認知症以外の精神疾患の場合などは、要介護の利用者でも医療保険になります。別表第8は、要介護者を医療保険に切り替える根拠ではなく、すでに医療保険が適用されている利用者について、週4日以上の訪問等の特例として働きます(複数名訪問看護加算の対象者要件としての別表第8は、これとは別の論点です)。

実務のポイント

  • 対象者の確認:医療保険は、別表第7・別表第8・特別訪問看護指示書・暴力行為等・身体的理由のいずれかへの該当を確認します(これは複数名訪問看護加算の対象者要件であり、保険の適用判定とは別の確認です)。
  • 区分の選び方:対象者区分イ〜ニに該当する場合は、同行する職員に応じて区分イ・ロを算定できます。対象者区分ニ〜ヘに該当する場合は、区分ハの対象となります。また、対象者区分イ〜ハに該当し、その他職員が同行する場合は、区分ニの対象となります。対象者区分ホ・ヘは、区分ハの場合に限られます。
  • 組み合わせの記録:誰と誰が同時に訪問したか(看護師等同士か、その他職員・看護補助者を含むか)を記録します。
  • 同時滞在の時間:その他職員・看護補助者は、常に同行する必要はありませんが、利用者の居宅で、両者が同時に滞在する時間の確保が必要です。
  • 週の限度:医療保険は、区分イ・ロは週1日、ハは週3日が限度です。ニには限度がありません。
  • 保険の判定が先:複数名で訪問する前に、その利用者が医療保険と介護保険のどちらの対象かを確認します。迷ったら、管理者に相談しましょう。

管理者が確認しておきたいこと

  • 利用者が、対象者の条件に該当するか
  • 利用者又はその家族等の同意を得ているか
  • 対象者の区分(イ〜ハか、ニ〜ヘか)に応じて、正しい算定区分を選んでいるか
  • 同行する職員が、看護職員か、その他職員(看護補助者等)かを記録しているか
  • 同時に滞在した時間が確保されているか
  • 週の算定日数の限度を超えていないか(医療保険)
  • その利用者が、医療保険と介護保険のどちらの訪問看護の対象かを確認しているか

よくある質問

Q. 単に2人で訪問すれば算定できますか?
A. できません。対象者に該当すること、利用者又はその家族等の同意を得ることが必要です。

Q. 複数名訪問看護加算(医療保険)に、医師の指示は必要ですか?
A. 複数名訪問看護加算そのものについて、今回確認した算定告示・留意事項通知では、医師による個別の指示を独立した要件とする記載は確認できませんでした。ただし、対象者の要件(特に特別訪問看護指示書)や、訪問看護指示書に関する条件は、別途確認が必要です。

Q. 別表第8に該当する要介護の利用者は、それだけで医療保険になりますか?
A. いいえ。別表第8は、要介護者を医療保険に切り替える根拠ではありません。すでに医療保険が適用されている利用者について、複数名訪問看護加算の対象者要件や、週4日以上の訪問の特例として働くものです。

Q. 介護保険の複数名訪問加算のⅠとⅡは、何が違いますか?
A. 同行する職員の組み合わせです。Ⅰは看護師等同士、Ⅱは看護師等と看護補助者の組み合わせです。

Q. 医療保険と介護保険、どちらの複数名加算を使うか、自分で選べますか?
A. 選べません。その利用者の訪問看護が、医療保険と介護保険のどちらで算定されているかによって決まります。

まとめ

  • 複数名訪問看護加算(医療保険)・複数名訪問加算(介護保険)は、2人の職員が同時に訪問看護を行った場合の加算
  • 医療保険の対象者は、別表第7・別表第8該当者、特別訪問看護指示書を受けている者、暴力行為等が認められる者など。これは複数名訪問看護加算の対象者要件であり、保険の適用判定とは別の論点
  • 対象者の区分(イ〜ヘ)と、算定する区分(イ〜ニ)は、同じ記号でも意味が違う。対応関係を確認してから算定する
  • 医療保険は、同一建物内の人数によって金額が変わる。週1日または週3日が限度(区分ニを除く)
  • 介護保険は、複数名訪問加算(Ⅰ)(Ⅱ)。単位数は254/402/201/317単位
  • どちらの保険で算定するかは、複数名加算そのものではなく、利用者の訪問看護がどちらの保険かによって決まる。別表第8は、保険切り替えの根拠ではない

最新の対象者・算定ルールは、必ず厚生労働省の資料や通知で確認してください。

関連記事:緊急時訪問看護加算Ⅰ・Ⅱの違い|算定要件と体制整備/訪問看護は医療保険と介護保険どちらで?|判断基準を整理(2026年度版)/制度一覧

出典:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(令和8年厚生労働省告示第74号)/算定留意事項通知(令和8年3月5日 保発0305第19号)/厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【訪問看護ステーション向け】」/近畿厚生局「よくある質問(訪問看護療養費の算定について)」(令和8年6月1日〜適用分)/指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第19号)、厚生労働省「令和8年6月改定箇所 指定居宅サービス介護給付費単位数の算定構造」(介護保険側の単位数の根拠)/株式会社ビジケア「複数名訪問加算(Ⅰ)(Ⅱ)とは?算定要件・単位数を徹底解説【介護保険】」(訪問看護経営マガジン、2026年5月31日公開。介護保険側の対象者・同意・記録の説明部分の出典)

最終確認日:2026年10月17日 ※制度は改定されるため、最新情報をご確認ください。

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